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正統カクテルを、アンダーグラウンドで-庵蔵 UNGRA-

GOURMET|2016.1.1 Photography:Satoru Hirayama
Text:Satomi Nishimura

燦瓢閣の2階に、迷い込む準備をどうぞ

西中洲。この地が有する響きには、なぜか大人への憧憬がにじむ。

九州随一の歓楽街・中洲へ続く国体道路は、今日も地元のビジネスマンや観光客であふれている。その喧騒から離れるように、那珂川の手前で路地に迷い込めば、そこが西中洲だ。ある夜は静かに、ある夜はこじんまりと賑やかに。大人たちが自分らしく時間を過ごせる店が、ぽつりぽつりと点在している。

さて、食事の後、次の1杯をいただく店はどこにしようか

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夜の色合いが濃くなった路地をふらふら歩くうち、あるビルの前で足が止まった。1970年代から西中洲の地にたたずむ、「燦瓢閣(さんぴょうかく)」である。いわゆる雑居ビルなのだが、平成の世にはまずお目にかかれない含みを持ったこの名前だ。そこに集まる店は、このビルに負けないほどの個性を携えていると、容易に想像がつく。

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ならばこの「燦瓢閣」の奥の奥まで見てみたい。2階へ続く階段をのぼり(もちろん、エレベーターなどはない)、明るくはない廊下の突き当たりまで歩を進める。シルバーに浮き上がる漢字のサインが見えた。「庵蔵(あんぐら)」。大人の男が似合う、バーである。

昼間にも会いたくなる、貴重な存在感

扉を開けると、「庵蔵」のオーナーであり、日々カウンターに立ち続けるバーテンダー、澤田浩二さんがいた。

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すっきりとまとめられたスーツ姿なので、クラシカルな蝶ネクタイ姿よりもなんとなく身近に感じる。しかし、動作の流れでカウンターに背を向けた時、そこには澤田さんの遊び心がちらり。スーツに店名の刺繍がほどこしてあるので、来店の際にはぜひご覧あれ。

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遊び心と言えば、オロジオのキープボトルをちょっと自慢させてほしい。〈Maker’s Mark〉のバーボンのラベルが、赤と青なのだ。これは、アメリカ大統領選の時に現地で発売されたもので、ちょうどその時渡米していた澤田さんが、オロジオのために日本まで持って帰ってきてくれた。「TVニュースで、赤=民主党、青=共和党というカラーリングはよく見るけど、バーボンボトルにも使われるんだね」と驚かされたものだ。もちろん、今でもボトルを見ればその時の気持ちがよみがえるし、カウンターでの会話も弾む。

オロジオ・木村社長は、澤田さんの人となりのファンである。「彼はね、昼間に会っても不思議なほど違和感がない。“夜”の空気を引きずらず、爽やかなんですよ。僕がいちばん好きなバーテンダーなんです」。

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ちなみに、澤田さんの1日は朝の半身浴から始まる。それから新聞に目を通しニュースを拾い、日中は経理関係の業務を進めることもある。子育て中ということもあるが、とにかく規則正しく過ごす。深夜までカウンターに立つ人としては、ある意味“個性派”な毎日の積み重ねが、澤田さんの佇まいをつくっているのかもしれない。

ジントニックの、ライムの位置には意味がある

「庵蔵」という名前には、アンダーグランドの意味を込めている。店があるのは2Fだが、西中洲「燦瓢閣」全体にどこか地下室と似た雰囲気が流れているし、また、いわゆるメインロードではない西中洲でバーを営むこと自体、少なからずアングラな方面を向いている。

一方、澤田さんのバーテンダーとしてのスタイルは正統派だ。独立前につとめていたのは、同じく西中洲にある名門のバー「MYMON(マイモン)」。ここで習得したカクテルの中で最も思い入れの強いものを聞いてみると、「ジントニックですね」と即答してくれた。

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ジントニックを構成するのは、ジン、トニックウォーター、ライムの3種だけ。そのシンプルさゆえ、バーテンダーのお酒に対する考え方がガラス張りで伝わるのだそうだ。「どれだけ気を遣って、ていねいにつくっているのか、分かる人にはすぐ分かる。常に気が抜けないカクテルですよ」。

澤田さんの場合、ジントニックのレシピを、夏と冬で変えている。ライムひとつとっても、夏は氷の上に浮かべるスタイル。爽やかな香りをよりフレッシュに感じてほしいゆえのアレンジだ。秋の気配を感じる頃、ライムは氷の下へと居場所を変える。柑橘の香りはやわらかくなり、肌寒い季節になじむ味わいとなる。

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「ジントニックには、人柄がでるからねえ」とオロジオ・木村社長。ひとくち飲めば、バランス感覚の素晴らしさを感じられた。正統派でありつつ、個性もしっかり。気遣い上手だけれど、ぶれはしない。年配の方からは可愛がられ、後輩からは慕われる、澤田さんのようなジントニックだ。

カウボーイから、浜田省吾まで

実は、澤田さんには、カウボーイという職歴がある。現在のスマートなスーツ姿からは想像もつかないが、21歳から約2年間、アメリカでカウボーイをしていた。少年時代からカウボーイへの憧れを持ち続け、英語の専門学校を卒業後、夢をかなえに本場へ渡ったのだそうだ。

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なんというギャップだろうか! 澤田さんとカウンターで向き合うのが、ますます楽しくなる。「庵蔵(UNGRA)には、馬の蹄鉄という意味も込めているんですよ」と、今も続いているカウボーイ魂を教えてくれた。

そして、ギャップと言えばもうひとつ。ミュージシャンの浜田省吾さんが好きなあまり、いろんなアクションを起こしていることもそう。

「普通に暮らしていたら、出会えないような人と出会えることも、バーテンダーの仕事の醍醐味ですからね」と澤田さん。今までも、有名企業の社長やスポーツ選手など、様々な方にお酒をつくってきたが、実は、自分にとって、その究極の存在が浜田省吾さんだと考えている。「いつか、カウンターに浜田さんが座ってほしいなあ、と、日々願っているんです。ゴルフが好きな浜田さんとの会話が弾むように、僕もゴルフを始めちゃったほどですよ(笑)」。究めるならとことん最後まで。内面には情熱がたぎっている。モンキーポッドのカウンターとともに澤田さんはチャンスを待つ。

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そんな澤田さんが、今、愛用している時計は、〈PANERAI/パネライ〉の「ラジオミール カリフォルニアダイアル」。余計なデザインをそぎ落とした、シンプル・イズ・ベスト。ではあるが、よく見ると、ローマ数字とアラビア数字が混在しているし、〈PANERAI〉のロゴも入っていない。

正統派、なのに個性派。澤田さんと通じるところのあるモデルなのであった。

この時計を手にしたのは、「庵蔵」のオープンから5年目の節目。次の節目までには、浜田省吾さんが「庵蔵」の常連になっているかもしれない。

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information

庵蔵 UNGRA(アングラ)
庵蔵 UNGRA
住所:福岡市中央区西中洲2-26 燦瓢閣2F
電話:092-716-5222
営業時間:19:00~深夜3:00
店休日:日曜
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