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HEIDELBERG 活版印刷-ドイツ-

LIFESTYLE|2015.7.31 Photography:Satoru Hirayama
Text:Satomi Nishimura

紙の上に命が吹き込まれていく、活き活きとした文字たち。

活版印刷で刷り上げた名刺を差し出されると、ついその相手に興味を抱いてしまう。
鞄の中にしまっているほかの持ち物にも、こだわりがあるに違いない。身につける服、食べるもの、選ぶお酒。日々の 暮し方のリズムにも、自分なりの指針を持っているのではないだろうか。

なにせ、できあがりまでに、それ相応の時間がかかる。費用だって、簡単にオーダーできるDTP印刷に比べたら、勇気がいるレベルだ。

もともとこだわりがある人でないと、活版印刷には近づかない、といった方が正しいのかもしれない。

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活版印刷に惹かれ、近づいてしまった人が、ここにもひとり。
そう、刻まれた名前をご覧のとおり、オロジオの木村社長だ。

“わざわざ”デザインしているように見えない、シンプルすぎるほどのさじ加減。その一方で、選んだ紙は、フランス製の「クレーンレトラ」。乾いているのに、しっとりと吸い付いてくるような、女性的な指触りの紙だ。触れた瞬間、何かが違うのを感じる。

そして、活字の文字に沿って陰をたくわえる凹み(へこみ)。写真でもお分かりだろうか?

ちなみにインクを乗せずに、活版のみで刷った(つまり、プレスした)ものがこちら。

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この凹みが紙に陰影をにじませ、表情をつくり、所有者の個性の一部になる。
では、実際、どのようにして活版で印刷しているのか。

オロジオ・木村社長が、ネームカードをオーダーしたプレススタジオ「CULTA(カルタ)」を訪ねてみた。

Press Studio 「CULTA」に待っている、ドイツの長老マシン

活版印刷を行うにあたり、必要なものは活字である。アルミの判子のようなあれだ。

しかし、今は活字自体が手に入りにくい時代。アルファベット26文字や数字だけならまだしも、ひらがな、カタカナ、漢字と複雑な文字を持つ日本語になると、好きな活字を集めるだけでも困難だ。

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そこで、「CULTA」では、オリジナルの「型」の制作をオーダーできる。いわば自分だけの大きな活字のようなものだ。デザインも「CULTA」店主の金澤正人さんが一緒に考えてくれるし、『型』の半永久的な保存もお願いできる。

上の写真は、木村社長のオリジナルの「型」。こちらをマシンにセットしていく。

マシンは、ドイツが誇る活版印刷機「HEIDELBERG(ハイデルベルグ)社」のものだ。

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日本に数十台あるのかというほど希少な存在。金澤さんが出会い、福岡に連れてきた。50数年前に製造された名作マシンだ。重さは1トン。黒々とその身を光らせながら、店の奥にでんと構える姿は、機械扱いしてはいけないような品格さえある。

ただただ、格好よい、この佇まい。普通に目にすることができるとは、幸せだ。

活版印刷機に型がセットされる。

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ローラーの必要な部分にのみインクが塗られ、回転を早めていく。

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どのくらいの力で、紙に圧を加えて『型』をプレスしていくのかを、設定するダイアル。
この強弱によって、どのくらいの深さで紙に凹みがつくのか、決まっていく。

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いくら優秀な印刷機とは言え、あやつるのは、やはり人。
プレスの掛け方、インクの具合、印刷スピードなど、総合的なバランスを取りながらの印刷で、仕上がりが驚くほど違ってくる。ここは、職人・金澤さんの腕の見せどころだ。

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ほかにも、紙質の違い、紙とインクのマッチング、湿度や温度など、さまざまな要素を掛け合わせながら、プリンティングの計画を立てる。
プシュ、プシュと、紙を吸い上げるエアーポンプの音と、アームが回る音が重なり、ネームカードが積み上げられていく。さあ、刷り上がった!

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パーツを交換していけば、あと100年は軽くもつだろう

金澤さんが、とある職人さんから「HEIDELBERG社」のマシンを受け継ぎ、「CULTA」をオープンさせたのは2012年のこと。「職人さんが高齢化するなか、活版印刷の技術を受け継ぐ人が必要だと思いました。もともと印刷が好きでしたし、使命感のようなものが湧いてきました」。

マシンのロゴも茶色くさびていたそうだが、「これからよろしくお願いします」と自らピカピカに磨き上げた。 操作マニュアルもなく、修理も自分で行う。

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大変なことにも多々でくわす活版印刷の仕事ではあるが、金澤さんは大きな可能性も感じている。
「この凹凸を利用して、例えば、点字や、またそれに代わるような役割を持つ、印刷物をつくれるのではないかと、今、イメージを広げています」。

社会貢献という機能を、活版印刷に付帯できる日も、近いかもしれない。

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「CULTA」店内には、最近の作品から、活版印刷の古書までが並ぶ。

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2色刷りなど、少しのずれが出ると、もう使えなくなるであろうに、こんなタグにも挑戦。

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福岡・天神のにぎやかさが少し静かになる須崎公園を、ぐるりと囲む通り沿い。飄々と新しいチャレンジを続ける「CULTA」が、あなたと活版印刷を結んでくれる。

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information

Press Studio CULTA(プレス スタジオ カルタ)
Press Studio CULTA
住所:福岡市中央区天神5-5-21 香月ビル1F
電話:092-406-2022
営業時間:12:00~19:00
定休日:日曜

プレススタジオ カルタ
http://culta.info
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