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美味なる瞬間をとらえ、旅情をかき⽴てる。-写真家 松隈直樹-

PEOPLE|2018.4.27 Photography:Satoru Hirayama
Text:Satomi Nishimura

おいしい関係から⽣まれた、松隈さんとのつながり

福岡を拠点に、世界で出会った美味しいもの、その⼟地の⾵景やトピックで、各地の魅⼒を表現する写真家、松隈直樹さん。活躍ぶりは地球の上を駆けまわるようで、2017年にいたっては海外での撮影旅⾏が計6回。現在も年の2/3は福岡以外で過ごしている。

撮影は、全国誌、九州ローカル誌、そして単⾏本を彩る写真とさまざまに⼿がけられている。九州在住の⽅ならば、JR九州発⾏の旅情報誌「Please(プリーズ)」のグルメページ担当と聞けば、ぐっと親しみが増してくるだろう。

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そんな松隈さんとオロジオスタイルをつないでくれたのは、おいしいものが⼤好きな⾯々だ。松隈さんに聞けば「起点となるのは、私が『にぃにぃー(沖縄⽅⾔で兄貴・お兄さん)』と呼んで慕っている、沖縄在住のカメラマン・垂⾒健吾さん(通称:たるけんおじぃ)。垂見さんは『辺銀⾷堂(⽯垣市)』の辺銀ご夫妻と⼤の仲良しなんです。そして、辺銀ご夫妻は、オロジオ・⽊村社⻑を『福岡のにぃにぃー』と呼んでいらっしゃる。そんなこんなのご縁があって、辺銀ご夫妻が来福された時に、⽊村社⻑と⾷事をしたんですよ。あの⽇のお店は『クロマニヨン』だったかな」。

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その後も、「ピッツェリア・ダ・ガエターノ」や「グリリア・ディ・ガエターノ」など、オロジオスタイルにも掲載されているあの店この店で遭遇すること数回。⽊村社⻑にとって松隈さんは、⽇本と世界の⾷と旅のおもしろい話をしてくれる「僕の旅情をかき⽴てる⼈」となっている。逆に松隈さんにとっての⽊村社⻑のイメージは「よく飲み、よく⾷べて、よく喋る。まるでイタリア⼈のように(笑)」。

拠点は福岡。オファーは全国から

雑誌を中⼼とする松隈さんの仕事は、オロジオスタイルの読者ならば、ほとんどの⽅が1度は⽬にしているのではないだろうか。前述のJR九州の旅情報誌「Please」は創刊号から写真を担当されていて、⼤学卒業後から、もうかれこれ30年間のおつきあいになる。

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また「dancyu」「プレジデント」「サライ」「婦⼈画報」「JCB THE PREMIUM」と、名だたる全国誌で松隈さんの写真を⽬にすることができる。誌⾯には「鮨特集」「餃⼦特集」「九州のうまいもん特集」など、おいしいものがずらりと並び、艶っぽい存在感で誘ってくる。これら全国誌の仕事は、若き松隈さんがはじめて撮影した全国誌の⼩さなカット(下関のレジャースポット紹介記事だったそう)から、少しずつ広がっていったそうだが、福岡在住でいてこのスタイルは、かなりレアケースだ。

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「なかでもこの媒体のおかげで、世界中を旅することができているんですよね」と⽬を細めるのは、全国信⽤⾦庫VISA GOLDカード会員誌「はれ予報」。こちらは⼀部webでも読めるのでぜひ検索を。

記憶に残っている撮影の旅は、モンゴルの草原でのキャンプだ。「ゲルというテントに泊まり、まだ寒い朝モンゴル人スタッフがやって来ては牛のフンを乾かした燃料で、暖炉に⽕をつけてくれるんです。その日のランチでは⽺を⼀頭しめて、豪快な蒸し料理に仕上げるまでの⼀部始終を撮影していました」。もちろん異⽂化に驚くことも多々あるのだが「やっぱり同じものを⼀緒に⾷べると、仲良くなるのが早いですね。それはどこの国の⼈でも⼀緒です」。松隈さんが、⾷を愛してやまない理由のひとつは、ここにあるのかもしれない。

写真に関しては、負けずぎらいな⼀⾯もあり?

サハラ砂漠でのキャンプ。アメリカ南部のエルヴィス・プレスリーの⽣家。ケネディ⼤統領が撃たれた現場ダラス。フロリダのNASAで⾒た、宇宙⾶⾏⼠の訓練⾵景。南アフリカの野⽣のペンギンやワイナリー。カナダのユーコンで⾒上げたオーロラ。フランスはブルゴーニュでワイナリー巡り。⾹港、台湾、韓国とアジアで麺巡りツアー。撮影旅⾏の⾏き先を聞いているだけで、今すぐスーツケースを持って家を⾶び出したくなる。確かに旅情をかきたてられる。

最近では、雑誌「サライ」の企画で、檀ふみさんと⾏く「ななつ星 in 九州」の1泊2⽇。せとうちクルーズ「guntû」では2泊3⽇。「とても贅沢な旅でした。まあ、どちらもプレスツアーなんですけどね」と松隈さんは笑っているが、なんともうらやましい。

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しかし、松隈さんは優雅にシャッターを切っているばかりではない。「雑誌って、たくさんのスタッフがチームで制作するものだから、カメラマンが複数⼈数います。となると、ほかのカメラマンには負けられないぞ!って、いまだに思っちゃうんですよね」なんて⼀⾯もある。

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中でも、強く覚えているのは、2006年、「はれ予報」の表紙を飾った1枚。当時、シアトル・マリナーズに在籍していたイチロー選⼿が、名前をコールされてベンチから⾶び出した瞬間を捉えたワンカットだ。「2006年といえば、松坂⼤輔選⼿がボストン・レッドソックスに移籍して、メジャーリーグデビューをした年。『はれ予報』の別チームは、松坂選⼿狙いでアメリカ東海岸に渡ったんです。そのチームのカメラマンはスポーツ専⾨の⽅でね。きっと松坂選⼿の写真が表紙候補として多数あがっていたはず。でも、最終的に表紙に選んでくださったのは、私のイチロー選⼿の写真でした。この時ばかりは『よしっ!!』って」。松隈さんを⽀える編集者への、クライアントからの信頼度がぐっとあがったことも、喜びの要因のひとつである。

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地元の飲⾷店の“ソワニエ”でありたい

⾷べることが⼤好きで、仕事でもプライベートでも、海外に⾏けば「やっぱり、⾁。ステーキが⾷べたくなる」という松隈さん。「パリに年1回は⾏っていますが、地元の⼈が通うような⾷堂がお気に⼊りで、ステック フリット(ステーキとフライドポテトのセット)ばかりを食べ歩いたりした事もあります」。

イタリアに⾏けば、キアナ⽜のビステッカ・アッラ・フィオレンティーナがお待ちかね。これは表⾯を炭⽕であぶり、中⾝はレアのままというTボーンステーキで「トスカーナの郷⼟料理ですね。分厚くて、実は和⾷の『⽜のタタキ』に近いんじゃないかな?」など、おいしい話が次々に⾶び出す。旅先では「どんな⼩さな集落を訪れても、そこで最もおいしいものを⾷べるために、情報収集はしまくります!」とのこと。

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旅の⽇々は、⾷べっぱなし、飲みっぱなし。福岡にいる時は「⿂と野菜中⼼の粗⾷を⼼がけているんですよ」と松隈さん。ちょっと外⾷がしたくなったら、近所の上⼈橋通りに繰り出し、焼⿃屋めぐりをするのが定番だ。「上⼈橋通りはおいしい焼⿃屋がほんとに多くって。『イル・フェ・ソワフ』『とりかわ みつます』、⽼舗の『野球⿃』などをぐるぐるまわっています」。東京からお客さんが来た時は、春吉の「うわのそら」、「柳橋 ⼀刻堂」、「久岡家」あたりを、⾏ったり来たり。皆、福岡の⾷のレベルの⾼さに驚いてくれるそうだ。

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「⾷べることが好きなので、いろんなお店に⾏きます。そして、好きなお店にはちゃんと顔を出して、回数を重ねるようにしています。その店にとってもいいお客さん……いわゆる“ソワニエ”になれたらいいなあ、なんて思っていますから」。

⾷への愛とリスペクト。松隈さんの写真が私たちに語りかけてくるように⽣き⽣きとしている理由は、ここにあるのかもしれない。

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写真家 松隈 直樹
写真家 松隈 直樹
福岡在住。得意とする分野は⾷、そして旅。JR九州「Please」の料理写真を約30年間撮り続ける。他にも「dancyu」「プレジデント」「サライ」「婦⼈画報」などの全国誌でも活躍。著書に「英国ファンタジー紀⾏」「英国貴族の館に泊まる」「英国ファンタジーを巡るロンドン散歩」がある(いずれも⼩学館より発刊)。

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instagram: naoking227
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