ながさわ結納店
住所:福岡市博多区上呉服町13-231電話:092-271-0813
営業時間:10:00〜18:00
店休日:水曜日
博多水引は東急ハンズ博多店1F、福岡三越8F などでも販売中
結納品や祝儀袋、正月飾りなどで目にする機会がある水引。“特別な時の特別なもの”として、普段の生活には馴染みのないものだと思っている方も多いかもしれないが、その認識を変える「水引」がここ博多にある。
オロジオの木村社長も「水引の価値観が全く変わった」と、その魅力に引き込まれたうちのひとりだ。たまたま訪れた東京ミッドタウンの道具屋「木屋」で展示されていた水引の飾りに一目惚れ。聞けば、「博多水引」だと言う。
「ギュッと束ねられたデザインの圧倒的な格好良さ。鮮やかな色使いにも鮮烈を受け、こんなモダンな水引が博多にあるのかと驚きました」と木村社長。自宅と店舗用に買い求め、飾るだけでその場の空気を凛としたものに変える水引の力に魅せられた。
作り手は上呉服町に店舗を構える「ながさわ結納店」二代目の長澤宏美さん。元々は父である宏昭さんが結納品の装飾として「博多水引」を制作していたが、グラフィックデザインを学び豊かな感性を発揮させる宏美さんの手で、独自のデザインと色使いの新生「博多水引」が誕生した。
「博多水引」は、しなやかなハリとねじりの強さが特徴で、福岡の県花である「梅」の立体的な造りも独特だ。長澤さんはその細やかで粋な細工で、水引の可能性を広げている。
ワインや日本酒などのボトルにかけるボトルリボンや、食卓を華やかにする箸置き、お土産にも好評なストラップなど、オリジナルのアイテムを開発。和の伝統を礎にした雅さと、洗練されたモダンなデザインがマッチして、今までにない“主役”となれる水引を生み出した。
「今では県外からも注目いただいて、アパレルメーカーや百貨店さんなどからコラボレーションの依頼もあり、様々な挑戦をさせていただいています。けれど大量生産でモノを売りたいのではなく、水引という文化ごと伝えていきたいので、職人さんがひとつひとつ手作りでもの作りをする姿勢は決して変えません」と、伝統を背負った長澤さんの言葉が力強く響く。
2016年には「G7北九州エネルギー大臣会合」に参加した各国の国旗カラーで水引を制作。イメージを膨らませ、色合いとねじりでそれぞれの国を表現した。
そんな多忙な水引デザイナーである長澤さんの根底にある気持ちは、「私の使命は、水引がみなさんの身近なものになること」。その言葉通り、「博多水引」は冠婚葬祭のシーン以外でも存在感を放つ。「いつのまにか私が作った水引がひとり歩きして、お客さまが逆にこんな使い方があるよ、とアイデアをくれることもあるんです」。ブローチや帯留め、髪飾り。花を飾るように日々の生活を彩るインテリアに。水引の新たな風がここから吹いている。
ギフト利用も多く、木村社長も友人の誕生日パーティーに向けてプレゼントを選んでいる最中だ。「フレンチのあのシェフにはトリコロールカラーがいいよね」と、青白赤の3色使いのボトルリボンをセレクト。誰かを想いながら、真剣に選ぶ気持ち。その心を水引はそっと閉じ込める。
水引は結納をはじめ、贈答品に想いを込めて結ぶ日本独自の文化だ。オロジオでは最近、婚約指輪のかわりに時計を贈り合うカップルも多く、「大切な人に贈る時計をボックスに入れて、この水引で結べば、最高に素敵なギフトになりそう。オリジナルの水引も作りたいなあ」と、木村社長の想いも膨らむ。心を贈る水引の文化を改めて再認識し、オロジオと長澤さんとの出会いを生んだ水引にも感謝。これから長い付き合いになりそうな予感とともに、博多の伝統工芸がぐっと身近なものに感じられた。