Vin Nerd/ヴァン・ナード
住所:福岡市中央区大名2-2-6電話:092-732-1033
営業時間:10:00〜22:00
店休日:日曜日(不定休)
「Vin Nerd/ヴァン・ナード」。すなわちフランス語で“ワイン・オタク”という名前を持つこの店。取材時も突然、いや必然的に、Vin Nerdな方々と遭遇するチャンスに恵まれた。
オーストラリア在住のワインの造り手とそのワインを輸入しているインポーターが、店をふらりと訪問していたのだ。
訪問といっても、商談に来たわけではない。「僕のつくったワインって、日本ではどんなショップに置いてあるの?どんな感じで飲まれているの?どんな人たちと関わっているのかな?」。その興味が高まって海を渡り、ついには日本へと遊びに来た感じだ。
スタッフの納富さん(左から2番目)によると「自然派ワインの造り手さんには、自分のワインがたどり着いた場所を訪ねる人がよくいるんですよ」。
ほとんど手作りのような製法で手間ひまかけて醸造している自然派ワイン。自分の手をはなれた後でも、その様子が気になるのだろう。
「Vin Nerd」の入口右手には、今まで訪れた造り手たちのサインがいっぱい。その文字のテイストにもナチュラルな香りがする。店を訪れたら眺めてほしい。なんとなく人間味が伝わる感じがする。
自然派ワインの大ファンで、「Vin Nerd」の常連であるオロジオ・木村社長も記念写真に仲良く収まる。
ここで「自然派ワインって何?」を分かりやすく教えてくださいと、納富さんにお願いしてみた。すると「そうですね。工場で大量生産されたオレンジジュースではなく、生のみかんをギュッと絞ってできたジュースを想像してもらうといいですね」。
自然派ワインは、できるかぎり自然な状態で栽培されたぶどうの実をつぶしてつくった液体に、天然酵母を加え、発酵させるという製法をとったものだ。
添加物を加えるなど人間が化学的にコントロールしていないので、味にブレが出る時もあるし、想定外に変化してしまうこともある。だが、ちょうど飲み頃のワインと出会った時は、それはもう身体になじむように、飲んだはしから吸い込まれていくから不思議だ。
ちなみにビオワインと自然派ワインはよく混同されるが、まったくの別もの。ビオワインはその原料であるぶどうがビオ(オーガニック認証取得など)であればそう名乗れる。工場で大量生産されていても、ビオワインなのだ。
一方、自然派ワインは、前述のような作り方。工場で細かく管理し生産したワインのように、大量生産をすることはできない。100%ぶどうだけでおいしいワインを造りたい!という生産者の想いで成り立っている部分も多いのだろう。
「そうですね。だから僕らは、ワインの造り手から飲む方へ、バトンをつなぐ役割を担っていると思っています」と納富さんは話してくれた。
自然派ワインのボトルのなかには、造り手はもちろん、それを紹介する店の思いも詰まっているのだ。
納富さんが以前勤めていた春吉の「山下ワイン食道」、ORO-GIO STYLEでも取材させていただいた大手門の「クロマニヨン」をはじめ、福岡市内には自然派ワインに力を入れている店が多い。
「もちろん店の数だけで言えば、東京の方が多いでしょう。しかし、コンパクトなまちにいくつも店があって、自然派ワインの店だけを気軽にハシゴできてしまうという環境はないんです。自然派ワインファンにとって、福岡はかなり魅力的なまちなんですよ」という。
ところで、自然派ワインは大量生産できないため、同じワインが常に店にスタンバイしているわけではない。「Vin Nerd」でワインを選ぶ時も、味の好みをスタッフに伝え、セレクトしてもらった方が確実だ。
またレストランなどで気に入った自然派ワインがあれば、エチケット(ラベル)を撮影しておいて「このワインが好きだったので、似たような味わいのものはありますか?」と聞いてみるのもいい。
取材時、納富さんが、自然派ワイン初心者のために選んでくれた3本。本数が揃わないため“売り切れごめん”で失礼します!
大人気の国産自然派ワイン、ヒトミワイナリーの「Sans Soufre Rurale Dela Blanc(微発泡・白)」。ヒトミワイナリーは滋賀にあり、濾過しない「にごりワイン」が特徴。ワインをアルコール飲料というより、農産物として捉えている。
納富さんがフランス滞在中に何本飲んだことか‥という、ラ・グランド・コリーヌの「LE CANON(ロゼ)」。これから自然派を飲みたいという方にぴったり。ちなみに「LE CANON/ル・カノン」とはフランス語で「一杯やろうぜ!」の意味。
そしてこちらは納富さんが自然派ワインにはまったきっかけ。リスペクトを込めて“自然派バカ”と呼ばれているフィリップ ジャンボン氏のサポートのもとつくられた「Une Tranche Nouvelle(赤)」。
造り手から「Vin Nerd」へ、そして私たちへ。自然派ワインのバトンがつながった時、その味わいにどんな想いが湧いてくるのか。今度は、私たちから誰かへ、おいしさを語り、つなぎ、自然派ワインのバトンをたくさんの人々につないでいきたい。
(2016.8.30.取材)