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焼とり店の新しいスタンダードに挑む-焼とりの八兵衛 店主 八島且典-

PEOPLE|2015.6.30 Photography:Daisuke Ikeda
Text:Shizuka Koga

店も店主も、クールでアツい!

「焼とり×ワイン」のスタイルを世に打ちだし、福岡・天神はもとより、六本木ヒルズや台湾など7店舗を構える名店「焼とりの八兵衛」。ここから巣立ち、新たに自分ののれんを掲げた後輩たちも、軒並み実力店として焼とりファンを沸かせている。スタイリッシュな店内に、心を揺さぶられる味わいと接客。そんな八兵衛の魅力は、店主・八島且典さんの魅力そのものであった。

「八兵衛を日本一カッコイイ焼とり店に」と提唱してきたのがスッと腑に落ちるほど、スマートな出で立ちの八島さん。コミカルとも捉えられる「BUTABARA」と印字の入ったTシャツが、クールに見えるほど。その内側には、焼とりへの熱いスピリットを宿していた。「BUTABARA TO THE WORLD」。八兵衛の新たなブランドコンセプトだ。

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新しいコンセプトの構想は、大好きなソラリアプラザへの出店から

「BUTABARA TO THE WORLD」のコンセプトに辿りついたのは、2014年春にファッションビル「ソラリアプラザ」へ進出したことがきっかけとなった。この出店、実は戦略や野心からではない。八島さんが「ソラリアプラザ」のことを好きだからという、意外な理由が微笑ましい。
「ソラリアには青春のすべてがあるんですよ。ソラリア創業前のスポーツセンターや映画館、目の前にある警固公園にも。そこで店をやれるっていうのがうれしくて」。青春時代を懐古する八島さんの表情からは、その当時の胸の高鳴りが滲みでている。

「焼とりの八兵衛ソラリアプラザ店」で刺激となったのは、その客層である。ベビーカーを押した家族連れや、年配の夫婦、ハンディキャップを持った人が、今までよりもずっと気軽に八兵衛に来られるようになった。そして、焼とりを前に顔をほころばせる。ランチもディナーもカバーする営業時間、駅直結というアクセスのよさ、バリアフリーのつくりが、それを可能にさせた。「ずっと来てみたかったんですよ」という声が、八島さんの心を打った。八兵衛の焼とりは、もっとみんなを幸せにできる。仕事帰りのビジネスパーソンだけではなく。

焼とりは、もっとみんなの中へ

八島さんが開拓し追求した「焼とり×ワイン」のスタイルは、焼とりの楽しみ方をぐっと広げてくれた。そのスタイルはこれまでと同様に、更に磨き続けていく。しかし、高みへ押し上げることで、大衆料理から遠くなったのかもしれないという思いも、八島さんの胸をよぎる。「ソラリアプラザ店でいろんな人が喜んでいる姿を見て、みんなの中に入っていきたくなったんです」。つまりは、原点回帰。その切り口としたのが、「BUTABARA」だ。

豚バラ・キャベツ・酢だれをセットでアイコンとし、福岡の焼とり=「BUTABARA」として定着させていきたい。福岡に来た観光客が、水炊き・豚骨ラーメンと並列で「BUTABARA」を指名する感覚だ。
焼とりを、もっと大衆の中へ、もっと世界へ。2015年中には台湾2号店がOPEN予定。そこで八島さんの新しい挑戦がカタチとなる。「新しいスタンダートを築いていきます」。八島さんの情熱が、再び燃え上がった。

特別感を与えてくれる接客術は、“気合い”から

八兵衛は、接客が秀逸であることでも知られている。1度でもそののれんをくぐったならば、自分のことを店員が覚えてくれているのだ。自己申告をしなくても、2度目の来店時には一品サービスがある。しかも、それは渾身の一品である。在庫余剰分などではない。顔を覚えていてくれたうれしさと、メニュー表にはないスペシャルな一品が感動となる。

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では、どうやって客を覚えるのか。極意を聞けば、「気合です」と、何ともシンプルな答えが返ってきた。「覚えなきゃ、覚えなきゃ!絶対また来てもらいたい!と、必死で覚えました」。その気合が、客の一挙手一頭足を、癖を、漂うオーラまでも見逃さないのか。八島さんが現場に立っていた頃は、客の職業までもピタリと言い当てられたという。

「『すみませ~ん』と手を挙げて店員を呼ばせたら負け。2回よばれたら最悪」。そういうほどに、さりげなくとも客をよく見ている。飲食店で料理の美味しさを追求するのは大前提だが、最終的に選ばれる店となるには、“人”が肝だと八島さんは考える。人を喜ばせようとする気概やセンスはあるか。「あなたは特別ですよ」というサインを、どう表現するか。

自分に相応しい時計との、相応しい付き合い方

さて、ここで八島さん愛用の時計を紹介してもらおう。
「これを身に着けている時が、一番褒められるんです」。オロジオで一目惚れし、迷いなく決めたという〈ZENITH〉ポートロワイヤル・オープンだ。「時計にも不思議と似合う・似合わないが出るんですよ。八島さんとこの時計は本当によくお似合いです」と、オロジオ・木村社長も目を細める。

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〈ZENITH〉ポートロワイヤル・オープンは、八島さんが購入した2010年当時、日本にまだ9本しか入っていなかったという希少なモデル。大切に扱っていたが、傷が入ってしまったので、オロジオに修理を依頼したことがあった。しかし、八島さんは傷がついたまま持ち帰ることとなる。
「傷も味になるんだと、木村社長が教えてくれたんです」。傷の修理はもちろん可能であるが、八島さんの男気ある性分に相応しい時計との付き合い方を、木村社長は提案したのであろう。「それ以降、気兼ねなく時計を身に着けられるようになりましたね」と八島さん。

八兵衛スピリットを宿したカンパニーを

今までは“店”づくり。これからは“会社”づくりに重点を置いていくという八島さん。7軒の店舗を運営している今、八島さんは自身が現場に立つべきではないと考えている。1軒の店は見ることができても、あとの6軒がおざなりになってしまうからだ。

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200人の従業員に対し、「俺の背中を見て…」では人材育成が追いつかない。八兵衛のスピリットを網羅した従業員向けの本の制作も進めている。ニューヨーク・パリ・ロンドンなどの世界進出も、今ではそれを自らではなく、従業員がやり遂げてほしいと八島さんは願う。「みんなが巣立っていって、いろんなことを整頓したら、また現場に立ちたいですけどね」。

八兵衛がカンパニーとしての魅力を高めていくことは、私たちが、世界が、焼とりを美味しく、楽しく食べられる機会に恵まれるということ。今後の八島さんの舵取りが注目される。それとともに、「八島さんが再び焼き台に立つ店の、カウンターに座る」という幸福な未来の光景を、頭の片隅にインプットしておきたい。

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information

焼とりの八兵衛 店主 八島且典
焼とりの八兵衛 店主 八島且典
実家は精肉業を営む。1983年7月、母とともに福岡県前原市(現・糸島市)で「焼とりの八兵衛」を創業。2000年の天神店開業を皮切りに、東京、そして台湾にも出店。現在は7店舗を営む。ミシュランで星を獲得した大阪の高級串揚げ店「六覺燈(ろくかくてい)」の水野幾郎氏に感銘し師事。社員もすべて「六覺燈」に連れていき、カウンターに座らせている。趣味は20年来の仲間とのゴルフ。カートも乗らずに歩きまわるのだとか。


焼とりの八兵衛
http://www.hachibei.com

ORO-GIO STYLE/GOURMET掲載ページ
https://oro-gio.co.jp/style/gourmet-hachibei
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